歩行と身体のバランスはとても重要な関係性があります。歩行が崩れると身体のバランスも崩れますし、身体のバランスの崩れると歩行も崩れます。
どこか体に不具合があると、とたんに歩行が乱れてしまう事は実際に感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
特に下肢は荷重が大きくかかってくる箇所なので、ちょっとしたバランスの崩れによって関節や筋肉への負担が大きくなってしまいます。
今回は普段普通に行っている「歩く」という行為について掘り下げて書いていきます!歩行分析していく際にもまずはここを理解して見ていきましょう^ ^
歩行は逆振り子運動
歩行は振り子を逆さまにした逆振り子運動を行っています。この逆振り子運動を効率よく行うことで偏った負担もなくバランス良く筋肉活動し楽に推進することが出来ます。
着地した足が振り子の支点で、重りが体の重心になります。支点が中心となって重心が回転運動のように円の軌道を描きます。重心はまっすぐ地面と並行に進むのではなく、上下運動をしているのです。
左右の足で交互に逆振り子運動をしながら振り子の運動エネルギーを伝えていくことが歩行の基礎となります。
逆振り子運動は運動エネルギーから位置エネルギーとなり、また運動エネルギーへと変換していきます。歩行でこの変換を効率よく続けていくには重心を押し上げる力と重心を前へ推進させる力必要となります。この力によって重心を最大の位置エネルギー変えてそこから一気に運動エネルギーに変換します。これにより必要最低限の力で推進出来、疲れにくい効率的な歩行が出来るのです。
重心を押し上げる力や重心を前へ推進させる力が弱いと位置エネルギーから運動エネルギーへの変換が弱く、本来なら使う必要のない筋力で推進させることになり疲れやすくバランスの崩れに繋がってしまうのです。
歩行周期
ではこの逆振り子で繰り返される歩行の周期について見ていきましょう。
初期接地 | IC | イニシャルコンタクト |
荷重応答期 | LR | ローディングレスポンス |
立脚中期 | MSt | ミッドスタンス |
立脚終期 | TSt | ターミナルスタンス |
遊脚前期 | PSw | プレスイング |
遊脚初期 | ISw | イニシャルスイング |
遊脚中期 | MSw | ミッドスイング |
遊脚終期 | TSw | ターミナルスイング |
歩行は大きく立脚期と遊脚期に分けられます。その名の通り脚が地面に着いている期間が立脚、脚が地面から離れている期間が遊脚です。
左右とも立脚期で逆振り子運動を行います。立脚中期のMStで位置エネルギーが最大になり立脚終期のTStで推進します。
立脚期
初期接地:IC(イニシャルコンタクト)
踵が地面につく瞬間のことで、歩行を見ていくうえでのスタート地点でもあり終着地点でもあります。
ICで踵から着地することで振り子運動が効率よく行われていきます。股関節屈曲位で膝関節を伸展させ足関節背屈位で踵を地面に着地させます。
着地することで足関節が屈曲位に働くのを前脛骨筋と長趾伸筋がセーブしながら衝撃を吸収し大殿筋で受け止めています。
主に働く筋肉は大殿筋・ハムストリング・大腿四頭筋・前脛骨筋・後脛骨筋・長趾伸筋で、特に前脛骨筋の衝撃を吸収する働きと大臀筋の衝撃を受け止める働きは重要です。
足首の伸展制限があったり臀筋が弱化していることで踵からの着地が崩れて以降の歩行効率が下がってしまいます。
荷重応答期:LR(ローディングレスポンス)
踵が地面についてから足底が地面につくまでで、反対側の足はISwとなりつま先が地面から離れていきます。
股関節は徐々に伸展させ膝関節は完全伸展から膝を固定させるように軽度屈曲にしながら地面へ荷重していきます。このとき足関節は背屈位から一旦屈曲位へ働きます。
完全に足底が地面に着くまでの回転運動期なので膝関節や足関節には衝撃を吸収し安定させるための働きが必要になります。主に働く筋肉は大殿筋・中殿筋・大腿筋膜張筋・ハムストリング・大腿四頭筋・前脛骨筋・後脛骨筋・長趾伸筋です。
立脚中期:MSt(ミッドスタンス)
足底が地面につき、しっかり荷重されている期間です。この時、位置エネルギーが最大になります。反対側の足は地面から完全に離れて前へ振り出す中間期のMSwとなっているので片足で支える力が重要となります。
片足で体を支えるためにそれぞれの関節に負担がかかりやすい時期ともなりバランスも崩れやすくなります。
股関節は引き続き伸展位となり、膝関節も安定させたまま足関節は背屈位へ移行させていきます。
このとき主にヒラメ筋で支えながら重心移動をする時期です。また中殿筋で片足荷重を安定させる必要があり中殿筋が弱いと横揺れが起こります。
主に働く筋肉は大腿筋膜張筋・大殿筋・中殿筋・後脛骨筋・腓骨筋・ヒラメ筋・腓腹筋・長趾屈筋となります。
立脚終期:TSt(ターミナルスタンス)
踵が浮き、体を前方へ押し出す推進期間です。反対側の足はそれとともにTSwからICに向けて前へ振り出します。
股関節を伸展させ、膝関節も伸展させながら足関節屈筋群である下腿三頭筋(ヒラメ筋と腓腹筋)を使い床を押し出します。足関節は背屈位となります。主に働く筋肉は大腿筋膜張筋・後脛骨筋・腓骨筋・ヒラメ筋・腓腹筋・長趾屈筋です。運動エネルギーと下腿三頭筋の力を合わせ大きく推進することが理想ですが、ICで踵着地の回転運動がうまく出来ていないと、ここでの運動エネルギーが弱くなり推進が弱く歩幅が狭くなってしまいます。
次にしっかり踵着地できるよう、ここで下腿三頭筋を使って地面を押し出すように推進しましょう。
遊脚前期:PSw(プレスイング)
荷重が徐々に少なくなり反対側の足に荷重が移行します。それに伴い膝を屈曲し遊脚期の準備に入ります。反対側はICからLRの初期となります。両足同時に10%ほどの荷重支持をしている時期です。
股関節と膝関節は伸展位で足関節は背屈位から屈曲位となり荷重を指先から抜いていきます。主に働く筋肉は大腿直筋・内転筋・薄筋となります。
遊脚期
遊脚初期:ISw(イニシャルスイング)
つま先が地面から離れてから脚を前へ振り出し反対側の脚を超える手前までの期間です。反対側の足はLRからMSt初期となり荷重が移行します。
薄筋や縫工筋などの股関節と膝関節をまたぐ二頭筋を使って股関節と膝関節を同時に屈曲します。足関節は屈曲位から背屈位へ移行します。
主に働く筋肉は腸骨筋・内転筋・薄筋・縫工筋・前脛骨筋・長趾伸筋となります。
遊脚中期:MSw(ミッドスイング)
反対側の脚を超えて下腿が地面に垂直になるまでの遊脚中間の期間です。反対側の足はMStとなりしっかりと荷重がまかされています。
股関節は振り出されて屈曲し膝関節は屈曲から徐々に伸展位となります。足関節は遊脚期につま先が地面につかないように伸筋が働いています。主に使われる筋肉は薄筋・縫工筋・前脛骨筋・長趾伸筋となります。
遊脚終期:TSw(ターミナルスイング)
下腿が地面に垂直になってから踵を着地させるまでの期間です。反対側の足はTStとなり立脚の後半になっています。
股関節は前に振り出された屈曲のまま膝関節も伸展をキープしたままICへはいるためにハムストリングと大腿四頭筋が働き着地へ向かいます。踵着地のために前脛骨筋も引き続きしっかり活動します。
主に働く筋肉はハムストリング・大腿四頭筋・大腿筋膜張筋・前脛骨筋・長趾伸筋です。
ここで足は前に出ますが、振り出された振り子の力で自然に前へ出しているので足を上げる(股関節を屈曲する)際の筋力は使っていません。あくまでも踵着地するために伸展をキープするためです。
逆振り子による推進力が弱い方はここで筋力を使って足を前に出すことになるので、疲れやすくなり足裏が同時に地面に着地する歩き方になってしまいます。
まとめ
歩行はこのように重力を使った逆振り子運動と筋力サポートによって出来るだけ疲れないように小さなエネルギーで推進するように出来ています。
股関節・膝関節・足関節の動きが悪かったり、筋力不足があるとこのバランスが崩れてしまい、疲れやすい・足がパンパンになる・膝が痛いなどの不調が現れます。
美しい歩き方をする上でもここは基本になりますので、ぜひ抑えておきましょう!
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