【この記事について】この記事は、仕事がなかなか覚えられないと感じている方が、自分でできる工夫を整理したものです。病気や障害の診断・治療についての助言ではありません。ストレスのサインと相談先の情報は、2026年11月1日時点で、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」に載っている内容だけを使っています(記事末尾に出典)。覚え方の手順は調査の数字ではなく、当サイトの整理です。Excelの数式は、Windows 版 Microsoft 365 の Excel(バージョン 16.0・ビルド 20527)で実際に入力して結果を確かめたものです。
対象:異動・転職・新しいシステムの導入などで、事務の仕事を新しく覚えなければならず「何度聞いても覚えられない」と落ち込んでいる40代の方
仕事が覚えられないときは、記憶力を責める前に「一度に教わる量が多すぎる」「仕事の流れが見えていない」「思い出す回数が足りない」の3つを疑ってください。教わった日のうちに自分用マニュアルを1枚に書き直し、見ないで思い出してから確かめる練習を、翌営業日・1週間後・1か月後の3回だけ入れると定着させやすくなります。眠れない・気分が沈むといった状態が2週間以上続くときは、こころの耳が専門家への早めの相談を勧めています。

まず結論|覚えられない原因を3つに分けて、効く手を選ぶ
「覚えられない」とひとまとめにすると、対策は「もっと頑張って覚える」しか出てきません。どこで止まっているかを3つに分けると、打つ手が変わります。
| どこで止まっているか | よくあるサイン | 効く手 |
|---|---|---|
| 量(一度に入りきらない) | 教わった直後から、もう前半を思い出せない | 教わる範囲を区切ってもらう。当日中にメモを1枚に書き直す |
| 流れ(全体が見えていない) | 手順は言えるのに、少し条件が変わると手が止まる | 手順の前に「何のための作業か」「前後に誰がいるか」を書く |
| 思い出す回数(使う機会が少ない) | 月1回の作業を、毎回ゼロから聞き直している | 見ないで思い出す練習を3回、日付を決めて入れる |
3つのどれか1つだけ、ということはあまりありません。ただ、いちばん困っている場面がどれに近いかを決めると、今日から何をすればいいかがはっきりします。
1. 覚えられないのは「記憶力が落ちた」からとは限らない
40代で新しい仕事を覚える場面は、20代のころと条件がかなり違います。
- 今の仕事を回しながら、合間に新しい仕事を教わる
- 教える側も忙しく、一度にまとめて説明されることが多い
- 「経験があるのだから」と、細かい説明を省かれやすい
- 聞き直すことに、若いころより抵抗を感じる
こうした状況では、誰が教わっても覚えにくくなります。この記事では、年齢と記憶の関係は判断しません。まずは覚えにくい条件がそろっていないかを見てみてください。
なお、こころの耳の「ストレスへの気づき」では、ストレスの原因になりうる職場での出来事として、仕事の量や質の変化や昇進・配置転換・転勤などの役割の変化を挙げています。新しい仕事を覚えている時期は、それだけで負担がかかっている時期でもあります。覚えられない自分を責める前に、その負担を少し差し引いて考えてください。
2. 仕事が覚えられない、よくある6つの状況
ここからは調査の数字ではなく、事務の仕事でよくあるパターンの整理です。自分に当てはまるものを探してみてください。
状況1:30分で1か月分の作業をまとめて教わる
引き継ぎの日に、締め・請求・支払い・月次の報告までを一気に説明される。説明を聞いている間に、前半の内容が押し出されていきます。量の問題です。あなたの記憶力ではなく、教わり方の側を変える余地があります。
状況2:手順だけを覚えて、目的を知らない
「このボタンを押して、この欄にこれを入れる」とだけ覚えていると、画面が少し違うだけで手が止まります。流れの問題です。何のための作業で、終わったら誰に渡るのかを知っていると、手順を忘れても推測で戻れます。
状況3:メモを取ったが、あとで読めない
説明について行くのに必死で、単語だけが並んだメモになる。翌日に読み返すと、何のことか分からない。メモを取ること自体が目的になっていて、書き直す時間がない状態です。
状況4:月に1回しかやらない作業
月末の締めや、四半期ごとの報告など、たまにしか来ない作業は、次にやるときには忘れています。思い出す回数が少ないので、毎回ゼロからになりがちです。
状況5:聞き直しづらくて、あいまいなまま進める
「さっきも聞いたのに」と思われるのが怖くて、確かめずに進める。結果としてやり直しになり、「やっぱり覚えられていない」と落ち込む。聞き方を先に決めておくと抜け出しやすくなります(7章)。
状況6:疲れや睡眠不足が続いている
新しい仕事を覚えている時期は、残業や持ち帰りで睡眠が削られやすくなります。疲れていると、教わったことが頭に入りにくいと感じる人は多いはずです。気分の落ち込みや寝つきの悪さが続くときは、8章の目安も見てください。
3. 教わるときのコツ|メモは「その場」より「当日中の書き直し」
その場のメモは、きれいに取ろうとしなくてかまいません。大事なのは、その日のうちに書き直すことです。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 教わる前 | 「今日はどこまで教えていただけますか」と範囲を先に聞く。多すぎるときは「今日は請求まで、支払いは明日でもよいですか」と区切る |
| 教わっている間 | 画面の名前・ボタンの名前・入力する欄の名前をそのままの言葉で書く。「なぜそうするのか」を1つだけ聞く |
| 教わった直後 | 「自分の言葉で言い直してみてもいいですか」と言って、手順を口で説明する。抜けたところを、その場で埋めてもらう |
| その日のうち | メモを自分用マニュアル1枚に書き直す(次の章)。書けなかったところが、翌日に聞くところ |
「言い直してみてもいいですか」は、教える側にとっても助かる一言です。どこが伝わっていないかが、その場で分かるからです。
画面の写真を撮っていい職場なら、写真も役に立ちます。ただ、写真だけでは「なぜその順番なのか」が残りません。写真は手順の補助、目的と順番は自分の言葉、と分けておくと読み返しやすくなります。
4. 自分用マニュアルを1枚で作る
会社のマニュアルがあっても、自分用の1枚を作る意味があります。会社のマニュアルは「全員向け」なので、あなたがつまずいた場所は書かれていないからです。
1つの作業につき、次の6つの欄だけを埋めます。
| 欄 | 書くこと | 例(請求書の発行) |
|---|---|---|
| いつ | 作業が来るタイミング | 毎月25日まで(25日が休日なら前の営業日) |
| 何のため | この作業の目的を1行で | 取引先に今月分の代金を請求する |
| 前と後 | 誰から受け取り、誰に渡すか | 営業から納品データを受け取る → 経理に控えを回す |
| 手順 | 5〜7行まで。動詞で書く | 販売管理を開く → 請求締めを選ぶ → 対象月を入れる → 一覧を出す → 金額を検算する → 発行する |
| つまずいた所 | 自分が間違えた・止まった所 | 締め日の欄は「月末」ではなく「20日締め」の取引先がある |
| 困ったら | 聞く人と、見る場所 | 〇〇さん(内線)。共有フォルダの「請求_手順」 |
手順を5〜7行に収めるのがコツです。それより長くなるなら、作業を2つに分けます。手順を細かく書きすぎると、読むのが面倒になって結局見なくなるからです。
「つまずいた所」の欄が、このマニュアルでいちばん価値のある欄です。会社のマニュアルにも、教えてくれた人の頭の中にも無い、あなただけの情報だからです。ミスをしたら、ここに1行足してください。ミスを型に分けて減らす方法は、こちらで詳しく書いています。

ノートの置き場所やまとめ方そのものに迷う場合は、IT学習向けに書いた次の記事の考え方も使えます。

5. 覚えるのは「見返す」より「思い出す」
マニュアルを作ったら、次は覚える番です。ここでのポイントは、見返すより先に、見ないで思い出すことです。
- マニュアルを閉じる
- 白い紙に、手順を思い出せるだけ書く(2〜3分)
- マニュアルを開いて、答え合わせをする
- 書けなかった行に印をつける
見返すだけだと、読んでいる間は「分かっている」気になれます。閉じて思い出そうとすると、どこを覚えていないかが自分ではっきり分かります。印がついた行が、次に思い出すときに気をつける場所です。
思い出す練習は、何度もやる必要はありません。当サイトでは、次の3回を目安にしています。
| 回 | いつ | やること |
|---|---|---|
| 1回目 | 教わった翌営業日 | 手順を全部思い出して書く。抜けた所を先輩に1回だけ確かめる |
| 2回目 | 5営業日後(約1週間) | 手順を思い出して書く。「つまずいた所」の欄を見直す |
| 3回目 | 20営業日後(約1か月) | 月1回の作業なら、ちょうど次の本番の前。本番の前日に思い出してから臨む |
1回が数分で終わるので、朝いちばんや、昼休みの後の5分に入れておくと続けやすくなります。3回目で全部書けたら、その作業は「覚えた」に移してかまいません。
6. Excelで「復習日」を自動で出す表
覚えることが増えてくると、「今日はどれを思い出せばいいか」を管理するのが手間になります。Excelで、教わった日を入れるだけで3回の復習日が出る表を作っておくと便利です。
| A | B | C | D | E | F | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 覚えること | 教わった日 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 今日やる? |
| 2 | 請求書の発行手順 | 2026/11/02 | 2026/11/04 | 2026/11/10 | 2026/12/02 | |
| 3 | 経費精算の締め | 2026/10/30 | 2026/11/02 | 2026/11/09 | 2026/12/01 | |
| 4 | 取引先コードの探し方 | 2026/10/26 | 2026/10/27 | 2026/11/02 | 2026/11/25 |
H列には会社の休日を縦に並べます(上の例では H2 に 2026/11/03、H3 に 2026/11/23)。そのうえで、2行目に次の式を入れて、下の行へコピーします。
| セル | 式 | 意味 |
|---|---|---|
| C2 | =WORKDAY(B2,1,$H$2:$H$20) |
教わった日の翌営業日 |
| D2 | =WORKDAY(B2,5,$H$2:$H$20) |
5営業日後 |
| E2 | =WORKDAY(B2,20,$H$2:$H$20) |
20営業日後 |
| F2 | =IF(COUNTIF(C2:E2,TODAY())>0,"今日","") |
今日が復習日なら「今日」と出す |
WORKDAY 関数は、土日と、3つ目に指定した範囲の日付を飛ばして数えます。C〜E列が数字で表示されたら、セルの表示形式を「日付」にしてください。
実際に入力して確かめたところ、H列を指定しないと、2026/11/02 に教わった作業の1回目が祝日の 2026/11/03 になりました。休日の範囲を指定すると 2026/11/04 になります。土日は自動で飛ばしてくれますが、祝日や会社の休みは自分で入れる必要がある点に注意してください。
今日の復習が何件あるかを1つのセルで見たいときは、空いているセル(たとえば G1)に次の式を入れます。
=COUNTIF(F2:F100,"今日")
朝、ファイルを開いて G1 が 0 でなければ、F列に「今日」と出ている行を思い出せばいい、という使い方です。TODAY 関数を使っているので、日付が変わるとファイルを開いたときに表示が切り替わります。日付の入力そのものを手早くしたい場合は、次の記事も参考になります。

7. 聞き直すときに使える一言
覚えられないことより、聞き直せずに進めてしまうことのほうが、あとで大きなやり直しにつながります。聞き方を先に決めておくと、聞くたびに気まずい思いをせずに済みます。
| 場面 | 使える一言 |
|---|---|
| 2回目に聞くとき | 「メモを見返したのですが、ここだけ自信がありません。〇〇の後は△△で合っていますか」 |
| まとめて聞きたいとき | 「確かめたいことが3つあります。5分だけお時間をいただける時間はありますか」 |
| 教わる量を区切りたいとき | 「一度に覚えきれる自信がないので、今日は〇〇まででもよいですか」 |
| 理由を知りたいとき | 「手順の理由が分かると覚えやすいので、なぜこの順番なのか教えていただけますか」 |
| 覚えたか確かめたいとき | 「一度、自分だけでやってみます。終わったら確認していただけますか」 |
コツは「自分で調べた跡」と「聞きたい所」をセットで伝えることです。「全部分かりません」より「ここだけ分かりません」のほうが、相手も短く答えられます。聞きたいことは付箋やメモにためておき、相手の手が空いたときにまとめて聞くと、話しかける回数も減らせます。
職場で頼みごとや質問をしづらいと感じるときの線の引き方は、こちらの記事で紹介しています。

8. 覚えられない状態が続くときの目安と相談先
ここまでの工夫は、仕事を覚えやすくするためのものです。この記事では、あなたの状態が病気や障害に当たるかどうかの判断はしません。工夫を続けてもつらさが続くときは、一人で抱え込まないでください。
こころの耳が示している目安
こころの耳の「ストレスへの気づき」では、こころの不調としてのストレスサイン(憂うつ感、不安感、やる気が出ない、寝つきが悪い、食欲がなくなる など)を挙げたうえで、「2週間以上続く場合は『うつ』が疑われますので、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することをおすすめします」と説明しています(出典:こころの耳「ストレス軽減ノウハウ 3 ストレスへの気づき」)。覚えられないと感じ始めた時期と、こうしたサインが出始めた時期が重なっているなら、相談を考えてください。相談先は、こころの耳の「相談窓口案内」から探せます。
社内で相談するとき
上司、人事、産業医などの産業保健スタッフ、社内の相談窓口が相談先になります。相談するときは、自分用マニュアルと復習の表を持っていくと、「どの作業を、どこまで覚えていて、どこで止まっているか」を具体的に伝えられます。教わる量が多すぎることが原因なら、引き継ぎの順番や期間を見直してもらう材料にもなります。
気持ちの面でつらいとき
覚えられないことが続くと、仕事そのものへのやる気が落ちてくることがあります。やる気が出ない原因を「体・仕組み・こころ」の層に分けて考える方法は、次の記事で書いています。

よくある質問
Q. 何度聞いても覚えられないのは、能力が低いからですか?
A. そうとは限りません。一度に教わる量が多い、仕事の目的を知らされていない、思い出す機会がない、といった条件がそろうと、誰でも覚えにくくなります。まずは自分用マニュアルを1枚作り、どこで止まっているかを「量・流れ・思い出す回数」のどれかに当てはめてみてください。
Q. 40代になってから物覚えが悪くなった気がします。年齢のせいですか?
A. この記事では年齢との関係は判断しません。40代は今の仕事を抱えたまま新しい仕事を教わることが多く、覚える条件そのものが厳しくなりがちです。条件を変える工夫(範囲を区切る・当日中に書き直す・3回思い出す)を試してから、それでも気になる点が残るかを見てください。
Q. メモを取っているのに、メモを見ても分かりません。
A. その場のメモは単語だけになりやすいので、その日のうちに「いつ・何のため・前と後・手順・つまずいた所・困ったら」の6つの欄に書き直してください。書き直せなかった所が、翌日に聞く所です。教わった直後に「自分の言葉で言い直してみてもいいですか」と確かめると、メモの抜けも減らせます。
Q. 先輩に何度も聞くのが申し訳なくて、聞けません。
A. 聞かずに進めてやり直しになるほうが、相手の手間は増えます。「メモを見返したのですが、ここだけ自信がありません」と、調べた跡と聞きたい所をセットで伝えると、相手も短く答えられます。聞きたいことはためておき、まとめて聞くと話しかける回数も減ります。
Q. 覚えることが多すぎて、復習の時間が取れません。
A. 思い出す練習は、1回2〜3分で済みます。全部を一度に覚えようとせず、Excelの表で「今日」と出た作業だけを思い出すようにすると、1日の負担は数分にとどまります。それでも追いつかないほど量が多いときは、教わる順番や期間を上司と相談する材料にしてください。
まとめ:覚える量を減らし、思い出す回数を決める
- 仕事が覚えられないときは、量・流れ・思い出す回数のどこで止まっているかを分ける
- 教わる前に範囲を聞き、教わった直後に自分の言葉で言い直す
- その日のうちに、6つの欄の自分用マニュアル1枚に書き直す。いちばん大事なのは「つまずいた所」の欄
- 見返すより先に見ないで思い出す。翌営業日・5営業日後・20営業日後の3回が目安
- Excelなら
=WORKDAY(B2,1,$H$2:$H$20)で復習日が出る。祝日は休日の範囲に自分で入れる - 聞き直すときは「調べた跡」と「聞きたい所」をセットで伝える
- 気分の落ち込みや寝つきの悪さなどが2週間以上続くときは、こころの耳が専門家への早めの相談を勧めている
新しい仕事を覚えようとしているあなたは、今の仕事を回しながら、もう一つ山を登っている最中です。一度で覚えられなくて当たり前です。今日教わったことを、今日のうちに1枚だけ書き直してみてください。3回思い出すころには、「聞かなくてもできる作業」が1つずつ増えていきます。
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出典(2026年11月1日 確認)
ストレス軽減ノウハウ 3 ストレスへの気づき|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh003/
相談窓口案内|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/


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