【この記事について】この記事は、職場の人間関係で疲れを感じている方が、自分でできる工夫を整理したものです。病気の診断や治療についての助言ではありません。調査の数字と相談窓口の情報は、2026年10月18日時点で、厚生労働省と、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」に載っている内容だけを使っています(記事末尾に出典)。相談窓口の受付時間などは変わることがあるため、利用する前に公式サイトで確認してください。ハラスメントに当たるかどうかの判断も、この記事では行いません。
対象:会社勤めで、上司・同僚・取引先との関係に「なんだか疲れた」と感じている40代の方
職場の人間関係に疲れたときは、相手を変えようとするより、「どの場面で消耗しているか」を1週間メモして、距離・役割・時間の3つで線を引くほうが、疲れを減らしやすくなります。全員とうまくやる必要はありません。目標を「仕事が回ること」まで下げるだけでも、気の使い方は変わります。ただし、眠れない・食欲がないといった状態が2週間以上続くときは、こころの耳が専門家(精神科・心療内科)への早めの相談を勧めています。自分で抱え込まずに、相談先を使ってください。

まず結論|疲れの正体を「人」ではなく「場面」で分ける
「あの人が苦手」「職場の空気がしんどい」と、人や職場全体で考えると、打つ手が見えにくくなります。疲れを場面に分けると、それぞれに小さな対策が置けます。
| 疲れる場面の例 | 引く線 | 今日からの一手 |
|---|---|---|
| 昼休みも気を使って休めない | 距離の線 | 週に2日は1人で過ごす日を作る |
| 頼まれごとを断れず、抱え込む | 役割の線 | その場で即答せず「確認して返します」と一度持ち帰る |
| 帰宅後も職場のやり取りが頭から離れない | 時間の線 | 会社のルールの範囲で、連絡を見ない時間を決める |
| 相手の一言を何度も思い返してしまう | 事実と解釈の線 | 「言われたこと」と「自分の受け取り方」を分けて書く |
ここから、なぜ疲れるのか、どう線を引くのかを順に見ていきます。
1. 人間関係の疲れは、あなただけの問題ではない
「人間関係で疲れるのは、自分が弱いからだ」と考えてしまう方は少なくありません。まず、数字で確認しておきます。
厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、仕事や職業生活に関することで強い不安・悩み・ストレスとなっている事柄がある労働者は68.3%でした。その内容(主なもの3つ以内)を見ると、次のようになっています。
| 強いストレスの内容(主なもの3つ以内) | 全体 | 40〜49歳 |
|---|---|---|
| 仕事の量 | 43.2% | 50.6% |
| 仕事の質 | 26.4% | 28.0% |
| 対人関係(セクハラ・パワハラを含む) | 26.1% | 22.5% |
| 役割・地位の変化等(昇進・昇格、配置転換等) | 19.8% | 27.7% |
(強いストレスとなっている事柄がある労働者を100とした割合。40〜49歳で強いストレスとなっている事柄がある人は73.0%)
強いストレスを抱えている人のおよそ4人に1人が「対人関係」を挙げていることになります。人間関係の疲れは、珍しいことでも、あなた個人の欠点でもありません。
40代の欄で目を引くのは、「役割・地位の変化等」が27.7%と、全体(19.8%)より高いことです。昇進や配置転換で立場が変わると、付き合う相手や求められる振る舞いも変わります。40代の人間関係の疲れは、人そのものより立場の変化と重なって出てくることがある、と考えておくとよいでしょう。
なお、令和6年調査は令和5年から設問の形式が変わっているため、厚生労働省は前年との数値の比較には注意が必要としています。この記事でも、前年との増減は扱いません。
2. 40代が職場の人間関係で疲れやすい4つの理由
ここからは調査の数字ではなく、よくあるパターンの整理です。自分に当てはまるものがあるか、見てみてください。
理由1:上と下の「板挟み」になりやすい
40代になると、上司の方針を後輩に伝え、後輩の不満を上司に上げる、という役回りが増えます。どちらの言い分も分かるからこそ、両方に気を使って、自分の分の疲れが後回しになります。
理由2:「察して動く」ことを期待される
経験があるぶん、言われる前に動くことを期待されがちです。空気を読む回数が増えるほど、1日の中で気を張っている時間が長くなります。
理由3:断ると評価に響く気がする
頼まれごとを断ったら「協力的でない」と思われるのでは、という不安があると、全部を引き受けてしまいます。仕事の量の疲れと人間関係の疲れが、同じところから出てくるパターンです。
理由4:職場の外で回復する時間が減っている
家庭のこと、親のこと、自分の体力の変化。40代は職場の外でも役割が増える時期です。回復する時間が減ると、以前なら流せた一言が、流せなくなります。疲れているのは心が弱くなったからではなく、回復の量が足りていないのかもしれません。
3. まずは1週間、「消耗メモ」で疲れの場所を探す
対処法を選ぶ前に、どこで疲れているのかを見える形にします。やり方は簡単で、疲れたと感じた場面を1行ずつ書くだけです。スマートフォンのメモでも、手帳でも構いません。
| 日時 | 場面 | 相手 | 何が疲れたか | 消耗度(1〜5) |
|---|---|---|---|---|
| 月 12:10 | 昼休み | 同じ島の同僚3人 | 話を合わせ続けた | 3 |
| 火 16:40 | 依頼 | 隣の課の先輩 | 急ぎの集計を断れなかった | 4 |
| 水 21:30 | 帰宅後 | 上司 | チャットの言い方を思い返した | 4 |
1週間たったら、消耗度が4以上の行だけを見返します。たいていは「特定の時間帯」「特定の頼まれ方」「特定の相手」のどれかに偏っています。偏りが見えたら、そこにだけ線を引けば十分です。全部の人間関係を見直す必要はありません。
メモを書くと、「思っていたより、あの人との時間は短かった」「疲れていたのは人ではなく、昼休みに休めていないことだった」と気づくこともあります。疲れの正体が分かるだけで、気持ちは少し軽くなります。
4. 職場の人間関係の疲れを減らす7つの線の引き方
ここからが対処法です。全部やる必要はありません。消耗メモで見つかった場面に合うものを、1つだけ選んで1週間試してください。
線の引き方1:目標を「好かれる」から「仕事が回る」に下げる
職場の全員と仲良くなる必要はありません。職場で必要なのは、仕事に必要な連絡と協力ができる関係です。「あの人に好かれていないかもしれない」と感じても、仕事が回っているなら、それで合格点です。目標を下げると、気を使う場面そのものが減ります。
線の引き方2:距離の線 ─ 休む時間は1人で過ごしてよい
昼休みに毎日誰かと一緒に過ごしていると、休憩の時間も気を張ったままになります。週に2日は1人で過ごす日を作ってみてください。「今日はちょっと用事があって」と一言添えれば十分です。休憩は休むための時間なので、1人で過ごすことに後ろめたさを感じる必要はありません。
線の引き方3:役割の線 ─ 頼まれごとは一度持ち帰る
その場で「いいですよ」と言ってしまうと、あとで自分の仕事が回らなくなります。頼まれたら、「確認して、15時までにお返事します」と一度持ち帰る習慣をつけます。持ち帰ったら、今の仕事量と締め切りを見て、受けるか、期限をずらしてもらうか、一部だけ受けるかを決めます。断ることよりも、即答しないことのほうが始めやすい方法です。
線の引き方4:時間の線 ─ 職場のことを考えない時間を決める
帰宅後や休日まで職場のやり取りを思い返していると、回復する時間がなくなります。会社のルールで認められている範囲で、「20時以降は業務チャットを開かない」のように、職場から離れる時間を決めておきます。緊急の連絡が必要な仕事の場合は、どの連絡なら見るのかを先に上司と決めておくと安心です。
線の引き方5:事実と解釈の線 ─ 言われたことと受け取り方を分ける
相手の一言が頭から離れないときは、紙に2列で書き出します。左に「実際に言われたこと」、右に「自分がどう受け取ったか」です。「この資料、明日まででいい?」という言葉を「仕事が遅いと思われている」と受け取っていた、と気づくだけで、反芻(同じことを何度も考えること)が弱まることがあります。苦手な上司との関係で、このやり方をもう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事にまとめています。

線の引き方6:雑談は「30秒で切り上げる出口」を先に決める
雑談そのものより、いつ終わるか分からない雑談が疲れのもとになっていることがあります。「そろそろ戻りますね」「続きはまた今度聞かせてください」のような、切り上げる一言を先に決めておくと、雑談に入るときの緊張が小さくなります。雑談が苦手な方向けの具体的な話し方は、こちらで紹介しています。

線の引き方7:職場に「話せる人」を1人だけ持つ
厚生労働省の同じ調査では、仕事や職業生活のストレスについて相談できる人がいる労働者は94.6%で、相談できる相手は「家族・友人」(68.6%)、「上司」(65.7%)の順でした。職場の全員と仲良くする必要はありませんが、ちょっとした愚痴や確認ができる人が1人いると、疲れの抱え方は変わります。こころの耳も、窮地に陥ったときに相談できる人を持つことは「極めて重要」だと説明しています。
相手の話を聞いたり、小さな頼みごとに応えたりして信頼を少しずつ積み重ねる方法は、ビジネス心理学の考え方を使ったこちらの記事が参考になります。

5. 場面別|この一言で線を引く
線を引こうと決めても、その場で言葉が出てこないことがあります。言い方を先に決めておきましょう。
| 場面 | 使える一言 |
|---|---|
| 急ぎの頼まれごと | 「今の作業の締め切りを確認して、15時までにお返事します」 |
| 手が回らない依頼 | 「今日中は難しいので、明日の午前でもいいですか」 |
| 昼休みの誘いを断る | 「今日はちょっと用事があるので、また今度ぜひ」 |
| 長くなりそうな雑談 | 「そろそろ戻りますね。続きはまた聞かせてください」 |
| 愚痴や噂話に誘われたとき | 「そうなんですね」と受け止めるだけにして、話題を仕事に戻す |
| 終業後の連絡 | (翌朝)「昨日はご連絡ありがとうございました。こちらで対応します」 |
ポイントは、相手を否定せず、自分の都合として伝えることです。理由を長く説明しすぎると、かえって相手に「交渉の余地がある」と受け取られやすくなります。
6. やらないほうがいいこと3つ
1. 全部を自分の中に飲み込む
「波風を立てたくない」と何も言わずに抱え込むと、疲れはたまる一方です。小さな線を早めに引くほうが、あとで大きくぶつかるよりも負担は小さく済みます。
2. 愚痴や噂話の輪に深く入る
その場では気が晴れても、輪の中の人間関係がまた新しい気疲れを生むことがあります。聞き役にとどめて、自分からは広げないくらいの距離感がちょうどよいでしょう。
3. 休日に職場の出来事を何度も思い返す
思い返すたびに、そのときの疲れをもう一度味わうことになります。思い出したら消耗メモに1行だけ書いて、「月曜日に考える」と決めて閉じてください。書き出すことで、頭の中だけで繰り返す時間を減らせます。
7. 「疲れた」が続くときの目安と相談先
ここまでの工夫は、あくまで疲れを減らすためのものです。疲れが続くときは、自分の工夫だけで何とかしようとしないでください。
こころの耳が示しているサイン
こころの耳の「ストレスへの気づき」では、こころの不調としてのストレスサインとして、次のようなものを挙げています(一部を抜粋)。
- こころの面:悲しみ、憂うつ感/不安感、イライラ感、緊張感/無力感、やる気が出ない
- 体の面:食欲がなくなる、やせてきた/寝つきが悪い、朝早く目が覚める
- 行動の面:消極的になる、周囲との交流をさけるようになる/飲酒、喫煙量がふえる
そのうえで、こうした症状が「2週間以上続く場合は『うつ』が疑われますので、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することをおすすめします」と説明しています(出典:こころの耳「ストレス軽減ノウハウ 3 ストレスへの気づき」)。この記事では、あなたの状態が病気かどうかの判断はしません。当てはまるものが続いていると感じたら、専門家に相談してください。医療機関は、こころの耳の「全国医療機関検索」から探すこともできます。
まず自分の状態を確かめる
こころの耳には、「3分でできる職場のストレスセルフチェック」があります。23問の質問に答えると、職場でのストレスの状態を確かめられます。厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」を参考に作られたものです。人に話す前に、まず自分の状態を言葉にする手がかりになります。
相談できる窓口
| 相談先 | 内容(2026年10月18日 こころの耳で確認) |
|---|---|
| 社内 | 上司、人事、産業医などの産業保健スタッフ、社内の相談窓口(会社によって異なる)。こころの耳は、仕事で行き詰まったときは同僚や上司に、心身の異常であれば医療の専門家に相談することを勧めている |
| 働く人の「こころの耳電話相談」 | 0120-565-455(フリーダイヤル)。平日(月〜金)17:00〜22:00(受付は21:50まで)、土曜・日曜 10:00〜16:00(受付は15:50まで)。祝日・振替休日・年末年始(12月29日〜1月3日)を除く。発信者番号が非通知の電話は受け付けていない |
| 働く人の「こころの耳SNS相談」 | LINE で相談できる。平日(月〜金)17:00〜22:00(受付は21:30まで)、土曜・日曜 10:00〜16:00(受付は15:30まで)。祝日・振替休日・年末年始を除く |
こころの耳の電話・SNS相談は、人間関係の悩みや仕事の悩みも相談の対象として挙げています。一方で、病名の診断や治療方法の提示、ハラスメントに当たるかどうかの判断などは対応できないとしています。相談内容に合った専門の窓口は、こころの耳の「相談窓口案内」で紹介されています。
上司などからの言動がパワーハラスメントに当たるのではないかと感じている場合は、人間関係の工夫で乗り切ろうとせず、記録を取って相談することが先です。判断の考え方と相談先は、上でも紹介した「上司が苦手なときの対処法」の記事で、厚生労働省の説明をもとに整理しています。
よくある質問
Q. 職場の人間関係に疲れるのは、自分のコミュニケーション能力が低いからですか?
A. そうとは限りません。厚生労働省の令和6年の調査では、強い不安・悩み・ストレスとなっている事柄がある労働者のうち、26.1%が「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」を挙げています。多くの人が抱えている悩みです。能力を責める前に、どの場面で疲れているのかを消耗メモで確かめてみてください。
Q. 1人で昼休みを過ごすと、職場で浮いてしまいませんか?
A. 毎日でなくても大丈夫です。週に2日だけ、「今日は用事があって」と一言添えて1人の時間を作るところから始めると、周りも自然に受け止めやすくなります。休憩はもともと休むための時間です。
Q. 休日も職場の人のことを考えてしまいます。
A. 思い出したら、消耗メモに1行だけ書いて「月曜日に考える」と決めて閉じる方法を試してみてください。書き出すと、同じことを頭の中で繰り返す時間を減らしやすくなります。眠れない日が続くなど、つらさが続くときは、この記事の7章の相談先を使ってください。
Q. 会社の人に相談すると、評価に影響しないか心配です。
A. 社内の相談窓口の扱いは会社ごとに違うため、就業規則や窓口の案内で、相談内容がどう扱われるかを確認してから使うと安心です。社内に話しにくい場合は、こころの耳の電話相談やSNS相談のように、社外の窓口を使う方法もあります。こころの耳はプライバシーを厳守するとしています。
Q. 病院に行くほどではない気がします。どう判断すればいいですか?
A. この記事では病気かどうかの判断はしません。こころの耳は、憂うつ感や寝つきの悪さなどのサインが2週間以上続く場合は、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することを勧めています。迷ったときは、まず「3分でできる職場のストレスセルフチェック」で自分の状態を確かめたり、電話相談で話してみたりするのも一つの方法です。
まとめ:相手を変えるより、線を1本引く
- 人間関係の疲れは珍しくない。厚生労働省の令和6年の調査では、強いストレスを抱える労働者の26.1%が「対人関係」を挙げている
- 40代は「役割・地位の変化等」のストレスが全体より高い(27.7%)。立場の変化と人間関係の疲れは重なりやすい
- まず1週間、消耗メモで疲れる場面を探す。消耗度4以上の行だけに対策する
- 線は距離・役割・時間・事実と解釈の4つ。7つの方法から1つだけ選んで試す
- 言い方は先に決めておく。相手を否定せず、自分の都合として伝える
- 憂うつ感や寝つきの悪さなどが2週間以上続くときは、こころの耳が専門家への早めの相談を勧めている。電話やLINEの相談窓口もある
長く働いてきたあなたが疲れているのは、それだけ周りに気を配ってきたからです。全部の人間関係を一度に変える必要はありません。今週は、消耗メモに1行書くところから始めてみてください。疲れの場所が分かれば、線は1本ずつ引いていけます。
次に読む


出典(2026年10月18日 確認)
令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50b.html
令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 個人調査(PDF)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
ストレス軽減ノウハウ 3 ストレスへの気づき|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh003/
ストレス軽減ノウハウ 4 ストレスへの対処|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh004/
3分でできる職場のストレスセルフチェック|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/check_simple/
働く人の「こころの耳電話相談」|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/
働く人の「こころの耳SNS相談」|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/sns-soudan/
相談窓口案内|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/
全国医療機関検索|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/facility/

コメント